クルド人がイラク新政府のキングメーカーになる可能性!?

イラクの選挙管理委員会は、10月10日に実施された立法委員選挙の結果を11月31日にようやく発表しました。

この発表によって、イスラム教シーア派のムクタダ・アル・サドル派が329議席のうち73議席を獲得して、当選したことが確認されました。

その結果、イランの支援を受けた民兵組織である人民動員軍(PMF)と提携している、ライバルであるシーア派のアル・ファタ同盟は、投票で敗れたのです。

イランの主要なクルド人政党が重要な役割を果たす可能性のある新しい政治体制への扉を開くとして、シーア派政治エリート内の緊張に繋がっています。

スンニ派とクルド人の主要政治勢力との合意による「国民多数派政権」を模索する意思を示しており、サドル氏はすでにアル・ファタやヌーリ・アル・マリキ前首相の「法の国」党内の一部との取引を停止しています。

クルドの主要政党が会談で統一戦線を維持せきるかどうかにかかっていることもあり、内部の分裂と対立を克服することを意味しています。

緊張しているクルド人内部

1990年第初頭から、イランのクルド地域のクルド民主党(KDP)とクルディスタン愛国同盟(PUK)が、ペシュメルガ部隊を指揮して権力分立の合意に基づいて総治してきました。

ですが、現在PUKはKDPや新興政党に押され気味になっており、徐々に体制が崩れてきています。

10月の選挙では、実際にKDPに対して大きくパワーバランスが傾いており、新議会でクルド人政党が取得した63議席のうち、KDPが31議席、そしてPUKが18議席を締めているに過ぎません。

PUKの中心核であるキルクークとスレイマニアで、それぞれ2議席を取得したことがKDPの大きな特徴です。

こうした結果は、イラク大統領選とキルクーク州知事選の合意候補者擁立など、両党の関係に大きな影響を与えることになります。

イラク大統領のポストは、2003年の米国侵攻によるサダム・フセイン政権の崩壊以降、スンニ派とシーア派の権力分立協定によって、クルド人コミュニティの代表者に割り当てられています。

キルクークはクルド人の人口が最も多くなっていますが、KRIに属さない「係争地」の一部であり、PUKの指揮者の多くが同州出身ということもあり、従来はPUKの勢力圏に入ると見られてきました。

しかし、過去の取り決めに耳を傾ける理由はないとKDPは考えており、2007年のクルド独立住民投票の後、バグダッドがクルド人指導部を「罰する」ためにシーア派民兵を送り込みました。

このシーア派民兵が進行する中、PUKの有力指導者がキルクークから撤退したことで、PUKのペシュメルガが裏切ったと認識しています。

クルド人にとってのチャンス

クルド人政党は、10月10日の選挙のクルド議会で58議席から63議席まで増やしました。

一方、スンニ派は合計70議席ほとありますが、クルド人政党と違って現地でそれほど大きな力を持っていないこともあり、スンニ派地方を直接動かしているわけではないのです。

こうしたこともあり、クルド人の方がキングメーカー的な役割を果たす可能性が非常に高くなっています。

クルド人政党はポストを増やすだけでなく、サドルが想定する構成の「国民多数派政府」では、イラク内閣の参加者から真の意志決定者に変身する機会を得ることができます。

これによって、政権ポスト交渉における影響力の増大ちは別に、バグダッドとの数々の難問の交渉においても選挙での実績向上が有利に働く可能性があります。

2014年、KRIのマスード・バルザニ大統領とイラクのヌーリ・アルマリキ前首相との緊張関係の中で、バグダッドは、エルビルが石油販売国家機構に合意した量の石油を納入していないと非難しました。

その後、国家予算のクルド分への配分中止を決定し、それ以来、いくつかの協定が結ばれましたが、紛争を解決することはできていません。

バグダッドとエルビルは新たな協定に合意し、前者がクルド地域政府(KRG)に毎月2000億ディナール(約1億3700万ドル)を今年6月に送金することになりました。

しかし、この合意はあくまでも今年の予算に対してのみ有効ですので、クルド人政党は政党樹立交渉の中で再交渉の機会を待つことになります。

また、キルクーク県とニネベ州、ディヤラ州、サラディン州の十数県を含む「係争地」の問題もあります。

2005年にこれらの地域の地位は、イラク憲法が公布された後、KRIとバグダッドによって解決されるはずでした。

しかし、ISISとの戦いの中で、KRIのペシュメルガ部隊はこれらの地域の一部を制圧することができましたが、住民投票の余波で撤退を余儀なくされたこともあり、実現しなかったのです。

それ以降、こうした地域ではバグダッドとエルビルの間の治安、行政、政治協力が非常に限られており、親イランの武装集団が治安を支配しています。

10月の選挙では、ディヤラ州、サラディン州、ニネベ州の係争地で新たに取得した5議席すべてをクルド人政党が取得したことによって、こうした地域では良い成績を収めました。