なぜ何千人ものイラクのクルド人がヨーロッパを目指すのか?

イラク北部のクルド人半自治区で、今年、何千人もヨーロッパに向けて命がけて目指した人々の中には、アソス・ハッサンさんもいました。
アソス・ハッサンさんは、経済的困難と政治的抑圧から逃れようと、首都エルビルの東に位置する町、コヤの大学を28歳に卒業後、2度エーゲ海を渡ってギリシャに行きました。

しかしトルコ当局に強制送還されましたが、何度失敗しても諦めることなく、トルコに戻って目的地にたどり着くまで挑戦するとのこと。
「この惨めな生活を続けるぐらいなら、死んだほうがましだ」「何度強制送還されても頑張ります」とハッサンは言っています。

ハッサンと同様、ハラブジャ出身の21歳のカマラン・アジズさんも、ベラルーシ経由でヨーロッパに行こうとしました。
しかし先週、パスポートのビザの期限が切れたこともあり、現地当局に捕まって強制送還されました。

アジズさんはヨーロッパを目指すために、クルド人の密輸業者に6,000ドルを支払って渡航しましたが、ベラルーシの国境警察に拘束され、殴られた後、強制的に帰国させられました。

アジズもハッサン同様、アルジャジーラに対して「クルドにいるぐいなら、死んだほうがましだ」と、、、
クルド人地域の出身者が、先週、英仏海峡を渡ろうとして30人近くの多くの人々が命を落としました。

クルド地域の汚職、抑圧、貧困の闇

未払いの給料、高い失業率、貧弱な公共の場サービス、蔓延する汚職が多くのクルド人移住者に繋がっていることもあり、何十年にもわたってパトロン・ネットワークについて訴えています。

ハッサンはこれに対して「支配層との繋がりがなければ、仕事は見つからない」と言っています。
また、市民権を求めるために平和的なデモに参加しようとすると、治安部隊によって実弾で撃たれるだけです。

クルド地域ではバルザニ家とタラバニ家、それを率いているクルディスタン住民党(KDP)と愛国同盟クルディスタン(PUK)の抗議活動がここ数年、増加しています。
7年前にカットされた月給の復活を求めて、先月、スレイマニアの数千人の学生たちが数日間にわたって街頭に立って抗議活動を行いました。

この抗議活動に対して、機動隊が学生たちに実弾を使用して立ち向かい、群衆を解散させた後、どんどん暴力的になりました。
バグダッドを始めとした、コヤ、エルビル、カラール、ハラブジャなど、クルド地域の他の都市にも小規模な抗議活動が広まりました。

増加する移民の数

2021年に入ってから少なくとも4万人ものイラク人が国外に出ており、そのうち70%はクルド人が来ていると、スレイマニアに拠点を置く、サミット財団の代表である、アリ・ジャラル氏が言っています。

イラクからの移住は1990年代から増加傾向にあるとジャラル氏が言っており、2003年の米国主導の侵攻後、ISIL(アイシス)の台頭によってさらに増加しました。
クルド地域政府(KPG)とよると、クルド地域からの転出者の増加について、トルコとクルディスタン労働者党(PKK)との長年にわたる緊張関係がだとしています。

また、2014年にISILがイラク北部の大部分を占領した後、イラク全土から国内避難民が流入したことも原因です。
国際社会の多くからPKKはテロリスト集団に指定されており、イラク北部の山岳地帯を踏み台にして、トルコに反乱を起こしています。

これに対してトルコ軍は、イラク北部のPKKに定期的に空爆や越境作戦を行っていると、現地当局が公表しています。
イラク国内の他の地域から70万人近くの国内避難民がこの地域に入っていることが、イラクのクルド人にとって大きな不満の種になっていると、先週発表された声明の中で話題になっています。

PKKの戦闘員がトルコと衝突したことによって、国境地帯の数百もの村が砂漠化し、移住者の増加にさらに繋がっています。

アルジャジーラ氏は、「出稼ぎに来ている人々は、クルディスタン地域の生活環境について、嘘を語っている」「クルディスタン地域の評判を落とすために利用されている」と言っています。

恥ずかしさを感じる理由

クルド人の移住の本当の理由は、政府の分析とは無関係だと地元のアナリストたちが語っています。
「主な問題は、自由、市民権の抑圧、汚職である」と、独立系クルド人アナリストのMahmood Yaseen Kurdi氏が言っています。

トルコとPKKの間の緊張関係や、国内避難民(IDP)の流入が小さな村に大きな影響を与えていることが原因だと否定しています。
「クルド地域からの移住が増加しているのは、若者が自由で適切な生活を送るのが難しいから」と、イラク中央政府の移住・移動担当副大臣であるカリム・ヌーリ氏も同意しています。

また最近では、ベラルーシとポーランドの国境沿いで難民危機が続いていることで拡大する貧困、汚職、財政不振に光が当てられており、派手なタワーマンションと開放的な緑地で知られる半自治区は自由を制限され、批判されています。